丸柚餅子の物語 03.海外展開②

丸柚餅子がニューヨークで使われたのは、柚子が海外やアメリカでも人気があるにも関わらず、生の柑橘類を輸入できないことに起因しています。柑橘王国である自国の産業を保護する目的なのか、とにかく生の柚子は輸入できなかったのです。そこで、柚子の風味を活かした料理を作るために長期間保存しても柚子の風味が変わらない丸柚餅子が注目されたのです。

また、柑橘類が輸入できないアメリカで丸柚餅子を紹介してくれていた料理人もいました。今では世界を股にかけるグローバルな料理人で、ミシュラン二つ星を獲得した金沢の料亭「日本料理・銭屋」の社長であり、アマン京都の日本料理「鷹庵」の総料理長でもある高木慎一郎氏でした。高校生の頃、ニューヨークでの留学経験がある高木慎一郎氏は、ニューヨークで交流のあるシェフらに招かれたイベントで、丸柚餅子を使った料理を提供していたのです。

そして、中浦屋の関係は「日本料理・銭屋」の先代が丸柚餅子をギフト用商品や料理に使っていたことに始まります。その後、2代目の高木慎一郎氏が海外で腕を振るうようになり、日本らしい食材として丸柚餅子を海外に持ち出してくれたのです。国内で丸柚餅子を使っているレストランはありますが、海外に届けてくれたのは高木慎一郎氏が初めてだったようです。

丸柚餅子の物語 02.海外展開①

2009年丸柚餅子は海を渡りアメリカの展示会に出展することになりました。

石川県産品の輸出を支援する石川県の後押しで、ニューヨークで開催された現地のレストラン向け展示会とイベントで丸柚餅子を紹介したのです。海外にまで丸柚餅子を紹介するには深いわけがありました。

柚餅子(ゆべし)、という食品は日本各地にあります。それぞれの歴史や地域性から形も味も違い、お菓子であったり塩辛い珍味であったりします。

そして、物産展や営業で「柚餅子のメーカーです」と挨拶すると「知ってる、ゆべしでしょ」と答えてくれます。

しかし、頭に描かれている柚餅子はそれぞれのふるさとの柚餅子で、似ているものもありますが、大抵は丸柚餅子とは別物の柚餅子を頭に浮かべているのです。

どこの柚餅子(ゆべし)も歴史は古く各地で育まれてきたものですから、地域に根ざした本物の特産品です。そこで、未だ柚餅子を知らないであろう国外で自社の丸柚餅子を紹介することにしたのです。

その相手はニューヨークの一流シェフです。料理の素材として提案することにより、既成概念のない料理人が丸柚餅子をどのように使い評価していただけるのか楽しみでだったのです。

その後、有名レストランのオーナーやシェフのみなさんとも懇意になり、丸柚餅子がフレンチレストランなどで使われることになったのです。

そのあと、現地で丸柚餅子を使用した本当の理由をあとになって知ることになります。続きは次の投稿になります。

NYCの有名フレンチ「ダニエル」のオーナーシェフのダニエルさん
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