丸柚餅子がニューヨークで使われたのは、柚子が海外やアメリカでも人気があるにも関わらず、生の柑橘類を輸入できないことに起因しています。柑橘王国である自国の産業を保護する目的なのか、とにかく生の柚子は輸入できなかったのです。そこで、柚子の風味を活かした料理を作るために長期間保存しても柚子の風味が変わらない丸柚餅子が注目されたのです。
また、柑橘類が輸入できないアメリカで丸柚餅子を紹介してくれていた料理人もいました。今では世界を股にかけるグローバルな料理人で、ミシュラン二つ星を獲得した金沢の料亭「日本料理・銭屋」の社長であり、アマン京都の日本料理「鷹庵」の総料理長でもある高木慎一郎氏でした。高校生の頃、ニューヨークでの留学経験がある高木慎一郎氏は、ニューヨークで交流のあるシェフらに招かれたイベントで、丸柚餅子を使った料理を提供していたのです。
そして、中浦屋の関係は「日本料理・銭屋」の先代が丸柚餅子をギフト用商品や料理に使っていたことに始まります。その後、2代目の高木慎一郎氏が海外で腕を振るうようになり、日本らしい食材として丸柚餅子を海外に持ち出してくれたのです。国内で丸柚餅子を使っているレストランはありますが、海外に届けてくれたのは高木慎一郎氏が初めてだったようです。